きのこと、牛と、スピード違反(その1) [放射能]



 久しぶりにノンビリした週末、新聞を開いてみるとセシウム牛の話題が紙面を埋めています。
 キロ数千ベクレルの食品が流通していたというのは 確かに非常にショッキングです。
 微量でもセシウムが出ただけで 普通は食欲がなくなるというのに、問題のお肉は規制値の数倍。
 暫定規制値の一桁上に軽くなってしまっています。

 担当部署は 汚染牛肉を懸命に回収しようとしているようですが、既に消費された分も多い様子。
 「凄く汚染された肉を食べてしまったかも」と怖くなるのは当然なのですが、パニックはちょっとストップ。

 汚染牛肉が食べられてしまうまでの過程をちょっと考えてみましょう。


 まず最初の関門が、牛が農家から出荷される段階で体表汚染のチェックと飼育状況の聞き取り調査が行われたことになっています。
 今回は 農家が虚偽の報告をしたために出荷が止められなかったとされています。
 自発的な申告に依存する体制では どんなに調査を強化しても 汚染食品を完全に止めることは出来ないでしょう。
 かといって、飼育中の全飼料の証明を求めるような方法も現実的ではありません。

 次の関門が 市場に流通する段階で行われる放射能のサンプリング検査。
 今回は 東京での検査で汚染牛肉が見つかり、どんどん範囲が広がってきたワケです。
 放射能の測定は 全量検査ではありませんから 汚染食品を完全に止める力はないのです。

 最後の手段は 市中に流通してしまった段階で汚染食品を回収することです。
 今回は 汚染判明の後 保健所への報告や回収が遅れたことがいわれています。
 ただ 食品の消費速度を考えると どんなに頑張っても この段階での成果は限られるはずです。


 どの段階での対策でも 汚染食品を完全に止めることは不可能です。
 どんなに頑張っても 無限大の検査リソースを想定しない限り 基準越え汚染食品は完全にはなくなりません。
 出来るのは 検査の回数を増やして 汚染食品が流通する確率と総量を少しでも減らすことだけです。

 福島県産の牛肉を全量検査するというのは、一つの対策ではあるでしょう。
 でも、実際に検査を行う体制が作れるのかは怪しいですし、検査のリソースを牛肉に重点的に振り分けるのが正しいのかも疑問です。
 疑い始めたら 福島県以外の牛肉だって不安になるし 牛肉だけが食べ物ではありません。
 検査のサンプルは多いほど望ましいのですけど 全食品全量検査なんて絶対に無理でしょう。

 このセシウム牛問題、本当の怖さは「汚染肉が流通した」ことではなく、むしろ「汚染肉が生産されてしまった」ことにあるように思います。
 流通段階の対策は採られてきているのに 今回は生産段階での対策が全く機能していないのです。

 生産者が屋外に置かれた麦藁の汚染を認識していなかった。
 政府や組合などによる放射能知識の普及が行われなかった。
 汚染軽減策があるのに 今まで対策されていない。

 もう事故から4ヶ月ですが、今頃 新聞にペルシアンブルーの有効性が書かれるようでは後手後手感が強くなります。

 基準値を越えた食品を流通段階で完全に止めることは出来ないのですから、それぞれの段階で 少しずつでも汚染を減らす効果を高めていくしかありません。
 まだまだ不十分ですが事後的な検査体制が強化されつつある中で 生産段階の対策が抜け落ちているのはどうしたものでしょうか。
 素人目には 流通段階での対策より 効果的でコストパフォーマンスの良いように思えるのですけど。

 事故初期に 「安全・安心」ばかりを強調したツケが 今頃 回ってきているのでしょう。
 「安全です」で思考停止させていては、汚染を減らす努力まで気が回らなくなります。
 まあ、牛肉だけに限った話じゃないワケですけどねえ。

(ちょっとだけつづく)



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